ノ ア

−新しい希望−




1.人物像



レメクが182歳の時に誕生したノアについて、レメクは「がこの地を呪われたゆえに、私たちは働き、この手で労苦しているが、この私たちに、この子は慰めを与えてくれるであろう」と語っているように、ノアの名前の由来は「慰め」です(創世記5:29)。ノアにおいて大地の呪いが解け、人類がその労苦から解放される時代の到来の予告と言えます。洪水以前の10人の族長の最後の人物です。ノアは500歳でセム、ハム、ヤペテの3人の子をもうけました(注)。彼は不信仰と背信の時代において「正しい人であって、その時代にあっても全き人であった。ノアは神と共に歩んだ」と言われているとおり、神の言葉を聞くことができ、またそれに従った人でした。そしてかの有名なノアの箱舟を建造し、その家族と地上の動物たちを救いました。
(注)セムはいわゆるセム系(アジア系)人種、ハムは黒人系人種、ヤペテは白人系人種の祖となったと考えられています。



2.主要なエピソードとその霊的意義



物 語

ノアが生きた時代はアダムとエバからはるかに下り、人々はみな主の言葉と約束を忘れ去り、「地上に人の悪が増大し、その心に計ることがみな、いつも悪いことにだけ傾く」状態であり、「神は地上に人を造ったことを悔やみ、心を痛められた」のです(創世記6:5,6)。そのような中でノアは主の御言葉を聞き、それに従って、全き人であって、人々に「義を宣べ伝えた」のです(2ペテロ2:5)。しかし彼は人々によって受け入れられず、神はついに洪水によって地を滅ぼすことを計画されますが、ノアは神の警告の言葉を聞き、それに従って箱舟を建造しました。神はノアと契約を結ばれ、ノアとその家族は救いの約束を受けました。そしてノアは「すべて主が命じられた通りにした」のです(創世記7:5)。

はたしてノアが600歳の時(注)、ついに天は破れて大雨が40日40夜降り続けました。地は一面水で覆われ、すべての生き物は絶えました。洪水が引いて箱舟から出たノアはのために祭壇を築き、その上で全焼のいけにえを捧げました。するとは心の中で「わたしは、決して再び人のゆえに、この地を呪うことはすまい」と思われ、ノアとその息子たちを祝福されました。そして再び洪水で地を滅ぼすことはすまいという契約を立てられ、虹をそのしるしとされました。この契約は普遍的かつ無条件であり、永遠のものです。こうしてノアの家族を通して、人類の新しい一歩が踏み出されたのです。
(注)ちなみに洪水が起こった時はメトシェラの死の時でした。メトシェラの意味は「彼が死ぬ時何かが起こる」という意味です。


霊的意義

ノアは正しい人でした。すなわちノアはつねに神の言葉を聞き、それに従ったのです。注意するべきは、ノアの時代にはもちろん律法はありませんでした。ですから彼は律法を守ったわけではありません。すなわちノアはへの信仰と従順によって歩んでいたのです。その結果彼は家族と共に洪水から救われる恵みを得たのです。明らかにこの箱舟は新約におけるイエス・キリストを象徴しています。神の言葉を聞いて、それを信じて箱舟に乗り込んだ人々は救いを得たのです。

そして洪水の後、祝福を得て、神は永遠の契約を結ばれました。この洪水はまさにを意味します。新約における水のバプテスマの象徴です。洪水の後の解放はまさに復活を意味します。復活においてノアは神との新しい契約に生きる祝福を得たのでした。しかもこの契約は明らかに神から一方的ないさおしによって締結されたものでした。この契約は現在でも有効です。すなわち、まことの箱舟であるイエス・キリストのうちに信仰によって逃げ込んだ人々は、イエスと共なる(洪水)と、その後に続くべきイエスと共なる復活(解放)に与ることができるのです。その時神の一方的ないさおしによる永遠の祝福の契約の良き効力のうちに生きることができます。まさにこのノアの箱舟は新約におけるイエス・キリストによる救いをビジュアルに見せてくれる絵本であるのです。



3.神の全計画における意義



ノアの箱舟は罪を犯したままの人類の行く末と、信仰によってまことの箱舟イエスに乗り込んで救いを得る人々行く末の決定的な分岐点を見せております。来るべき新約の救いの真理をいわば絵本として啓示しているのがノアの物語と言えます。イエスの死と復活に与ることができる新約のクリスチャンが与る神との永遠の契約は実はすでにノアが得たそれと同一のものです。私たちにとっても神とノアの契約はいぜんとして有効であって、それはわたしたちの信仰によってその効力を発揮します。なぜならイエスにおいてあらゆる神の言葉と約束はアーメン(注)とされたからです(2コリント1:20)。ここで注意する必要があるのは、神はノアに対して「再び洪水によっては地を滅ぼさない」と言われましたが、来るべき神の裁きの際は火による裁きであることが黙示録で啓示されております。
(注)「その通りにあれかし」とか「賛成・肯定する」の意味。クリスチャンの「お題目」の台詞ではありません。

mbao_a03.gif